新しい鶏伝染性気管支炎生ワクチンGN株の性状


佐々木崇、國米則秀(京都微研)

   鶏伝染性気管支炎ウイルスは、呼吸器病のみならず産卵異常や腎炎の原因となり、経済的被害が深刻な疾病です。本病に対しては既に多くのワクチンが実用化されています。しかし本病の関与が疑われる疾病は現在でも全国的に発生しています。そこで我々は野外における新たな変異株に対しても対応できる生ワクチンを目指しGN株を開発したので、その性状について報告します

   GN株の作出過程です。
   腎炎を呈した鶏から分離した岐阜株を、発育鶏卵及び細胞で継代・クローニングし、弱毒化したGN株を作出しました。
   このGN株について次に示す試験を実施しました。

   まずGN株の、他の株に対する交差性、すなわちGN株の親株である岐阜株、市販生ワクチン及びIBウイルスの代表的な株に対する交差性を、発育鶏卵を用いた中和試験で確認しました。

   次にS2糖蛋白をコードする遺伝子をRT-PCR RFLP法で分類しました。すなわち、各IBウイルスよりRNAを抽出しS2遺伝子をRT-PCRで増幅しました。このPCR産物を9種の制限酵素で消化し、その切断パターンにより遺伝子の近縁関係を解析しました。

   有効性確認試験です。4日齢のSPF鶏15羽にGN株10の4.0乗点眼し免疫群としました。無処置の15羽を非免疫群としました。免疫3週後、両群にGN株の親株である岐阜株を10の4.5乗点眼し攻撃しました。攻撃後は呼吸器症状を観察し、その程度をこの様にスコア化しました。また各臓器からのウイルス回収を実施しました。

   次にGN株の安全性を確認するための弱毒化確認試験です。
   呼吸器病原性についてはGN株及び岐阜株をそれぞれ1日齢のSPF鶏に10の4.0乗接種後、その呼吸器症状を観察し、さきほどと同様にスコア化しました。
   腎病原性についてはGN株及び岐阜株をそれぞれ1日齢のSPF鶏に10の5.5乗接種後、腎臓の肉眼及び病理組織学的所見を観察しました。

   交差中和試験の成績です。縦軸に抗血清、横軸に抗原、表中の数字は中和指数を示しています。通常、中和指数が2.0以上あれば発症防御に効果があるとされています。GN株免疫血清は岐阜株及びGN株と同等の高い値で交差し、GN株の抗原性が弱毒化により変異していないことが確認されました。
   またGN株抗血清は試験に用いた全ての株において2.0を超える値を示し、広く交差することが確認されました。

   次にS2遺伝子のRT-PCR RFLP法による分類の成績です。
   縦横に株を、表中の数字は酵素による切断パターンの相異があった数を示しています。
   青枠のところが切断パターンの相同性が高く、近縁な株といえます。この方法では6つのグループに分類されますが、このうちGN株は最近日本で分離されることが多いY型に分類されました。

   有効性確認試験の成績です。
   縦軸に呼吸器症状のスコア、横軸に岐阜株攻撃後の日数、表中の黄色がGN株免疫群、白が非免疫群を示しています。
   その結果、非免疫群ではこのように呼吸器症状が認められたのに対し、免疫群は完全に発症防御しました。

   岐阜株攻撃後のウイルス回収の成績です。
   縦軸に剖検時の日数、横軸に臓器、右側に回収率を示しました。
   表中のマイナスはウイルス回収陰性、プラスは微量ではあるがウイルスが回収されたもの、数値は回収されたウイルス量を示しています。免疫群では7、14日目の腎臓等から僅かにウイルスが回収されただけでした。非免疫群では多くの臓器から多量のウイルスが回収され、回収率も高い値を示しました。この様に免疫群では明らかに攻撃ウイルスの増殖が抑制されていました。

   弱毒化確認試験の呼吸器病原性の成績です。
   縦軸に呼吸器症状のスコア、横軸に接種後の日数、表中の黄色がGN株接種群、白が岐阜株接種群を示しています。
   その結果、GN株の呼吸器病原性は岐阜株に比べ明らかに軽減化されていることが確認されました。

   弱毒化確認試験の腎病原性の成績です。
   左側にGN株、右側に岐阜株、接種後7日、9日、11日及び死亡時の腎臓の肉眼所見・病理組織学的所見を示しました。
   その結果、GN株では肉眼的所見・病理組織所見にまったく異常が認められなかったのに対し、岐阜株では異常がみられ、さらに死亡する個体もいました。
   このことからGN株の腎病原性も岐阜株に比べ、顕著に軽減化されていることが確認されました。

   まとめです。
   GN株は血清学的に広い交差性を有していました。
   遺伝子型は最近分離されることが多い型でした。
   また、十分な発症防御効果と高い安全性を有していました。
   以上のことからGN株は新しい変異株に対する予防効果が期待できます。

 

 

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